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2014年1月17日 (金)

労働法制Q&A 第一弾

労働法制Q&A 第一弾

 昨年、「雇用の規制緩和」をテーマにおこなったL&Lカフェの中で「実は労働関連の法律って全然知らない」「法的にどんな権利が保障されているの?」といくつもの意見があり、「いちど労働法制について教えて欲しい」という要望が寄せられました。
 そこで、労働法制や労働組合運動に詳しい方にお願いして、Q&Aの形式で解説をお願いしました。今回は「第一弾」として、今後も情報を増やしていきたいと思います。ご要望などあれば是非お寄せください。
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 最近労働法制の「改悪」がマスコミでも頻繁に取り上げられますが、そもそも「これは改悪だ!」と確信するほどの知識を多くの労働者がもっていないのではないかと思います。その結果、多くの労働者が違法で過酷な労働条件の下に置かれ、過労死や過労自殺が多発しています。中には、労働組合に駆け込んで初めて「そんな権利があったんだ」と知り、元気に闘うケースも多々あります。
 ここでは、日本の労働法制の概略と「改悪」の動きについて、Q&Aという形で解説を試みたいと思います。

Q1 労働基準法(以下「労基法」と略す)という法律はどんな法律ですか?

A  憲法27条2項に「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と書いています。それに基づいて1947年に労基法が出来ました。その後何回かの改正(改悪も)がありましたが、会社経営者が労働者を働かせるにあたって守らなければならないことが定められています。

Q2 どんなことが定められているのですか?

A 賃金、労働時間、休息、休日、年次有給休暇、安全と衛生等々、多岐にわたって定められていて、法そのもの、施行規則、それに解説などを加えると何百ページにもわたる膨大なものになります。

Q3 そんな膨大なもの、説明しろって無理ですよね。じゃあ、とりあえず労働時間について、どんな決まりがあるのか教えて下さい。

A それに限っても、結構大変なんですがね。ただはっきりしていることは、一部の例外を除いて、労働時間の限度が1日8時間、一週間40時間だということです。あくまでもこれが大原則です。それを超えた労働は「時間外労働」といわれ、割り増し賃金(残業代)を払わなければなりません。

Q4 「サブロク協定」という言葉がありますね。

A そう。時間外労働(休日労働も含む)が許されるためには、時間外労働が必要な理由、業務、労働者の数、時間延長の限度などを労使協定で締結して労働基準監督署に届けなければなりません。これを定めているのが労基法36条なので、いつの日からかこの協定を「三六協定」とか「サブロク協定」と呼ぶようになっています。

Q5 残業代はどれくらい払われるのですか?

A  通常の労働時間(休日労働の場合は、労働日)の賃金の2割5分、休日労働は3割5分というのが基本です。時間外労働が深夜に及ぶ場合は5割以上、休日労働が深夜に及ぶ場合は6割以上となっています。また、2010年の改正で、時間外労働が月60時間超となった場合、上の率は5割(深夜に及ぶ場合は7割5分)ということになりましたが、中小事業主への適用は猶予されていて中小の労働者の怒りを買っています。

Q6 残業のし過ぎで、過労死が増えたり、メンタルヘルス問題が起こったりしてますが、こんなことが許されるのですか?

A 法的には残業時間の限度は、1週間15時間、2週間27時間、4週間43時間、1ケ月45時間、2ケ月81時間、3ケ月120時間、1年360時間というように細かく定められていますが、ほとんど守られていません。というのも、三六協定の締結に当たってで労使が合意すれば、上記の制限を超えた時間数を設定することが出来るという特別条項が許されているからで、法そのものが「ざる法」だと批判されています。
 それどころか、協定無視で(協定がない場合も)何時間も何十時間も働かせるというケースは山ほどあり、一部は労働基準監督署によって摘発されていますが、労働者の弱みをついて徹底的にこき使う経営者は後を絶ちません。

Q7 残業代はちゃんと支払われているのですか?

A そこが問題です。労働基準監督署や労働組合に相談で駆け込むケースで一番多いのが残業代未払いです。あとでも触れますが、企業はとにかく残業代を払いたくなくていろいろ悪辣な工夫をします。タイムカードに定刻の退社時刻を記入させた上で残業させたり、タイムカードそのものを改ざんしたり、賃金のなかにあらかじめ残業代相当分も入っていると言ってごまかしたりです。もっとも、しっかりとした労働組合があるところは、そういうことはありませんが。

Q8 「変形労働時間制」というのがあるようですが、どういうことですか?

A 業種によっては、忙しいときとそうでもないときとがあるので、平均して1日8時間、1週40時間の枠に収まっていれば、特定の日に10時間、特定の月に50時間というような労使協定を結べるというものです。1週単位の場合も1ヶ月単位の場合も1年単位の場合もあります。それ以外に「フレックスタイム制」というのも変形労働時間制の1種です。

Q9 「フレックスタイム制」って何ですか?

A  1987年の労基法「改正」で導入された制度で、1週間および1ケ月の法定労働時間を超えない範囲で、使用者が労働者に始業と終業の時刻の決定を委ねることが出来るという制度です。これも労使協定が必要です。
 この制度のいいところは、例えば電車のラッシュアワーを避けた勤務時間を選択出来るというところでしょう。しかし実際には、1ヶ月単位で労働時間を均すことによる残業代抑制が主目的で、始業時刻の朝礼などの参加が強制されたり、終了予定時間になっても帰れないとか、実質的には勤務時間が労働者に委ねられていないというケースがあって、この制度が悪用されているとの批判もあります。

Q10 会社や事業所に常時いるわけではない労働者の労働時間はどう計るのですか?

A それについては「見なし労働時間制」について説明しなければ行けませんね。
 「見なし労働時間制」は労基法で、その日の実際の労働時間に係わらず、その日はあらかじめ定めておいた時間労働したものとみなすという制度です。これには、「事業所外労働」、「専門業務型裁量労働」及び「企画業務型裁量労働」の3つがあり、このうち「事業所外労働」というのが質問に答える制度です。これは、営業活動などの外で行う業務について、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものと見なすというもので、これも労使協定を結ぶことになっています。実際の労働時間が長かろうが短かろうが、労働時間があらかじめ決まっているので、早く仕事が終わればいいが、実際の時間がかかりすぎても残業手当は出ません。だから見なし労働時間が不当に短く設定されることもあり得ます。 

Q11 観光旅行の添乗員の働き方には、見なし労働時間が適用されますか?

A これは現在係争中の問題です。全国一般東部労組阪急トラベルサポート支部で闘っているケースを紹介しましょう。どんなに長時間拘束されても、会社が定めた見なし労働時間に見合う賃金しか支給されないのは不当だ、見なし労働時間は偽装だ、残業代を払えという訴訟を起こしました。1審東京地裁は、見なし労働時間そのものは適法とした上で、実労働時間を勘案して、不払い残業代の支給を命令しました。これに対し、2審東京高裁は、見なし労働時間制の適用自体を不適当として、増額された不払い残業代の支給を命令しました。1審判決は、交通機関を利用した長距離移動では適宜休憩しているとか、飛行機内においても睡眠を取っているとかを理由に、全てを労働時間とは見なせないという論理展開ですが、2審では全て労働時間だと断定したのです。この2審判決が確定することを望みます。

Q12 裁量労働制というのはどんな制度ですか?

A これは1997年の「改正」で、労働側の激しい反対を押し切って導入された制度です。前にも触れましたが、企業側はなんとかして残業代を払わないで済ませたいということで、様々な制度を作りたがります。業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務に適用され、労働者は実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間働いたものと見なされるということです。
 これには2つのタイプがあります。「専門業務型裁量労働」と「企画業務型裁量労働」です。
  前者は、新商品や新技術の研究開発又は人文科学もしくは自然科学に関する研究とか、衣服、室内装飾、工業製品、広告等のデザイン考案の業務等々で、「なるほど」と思わせる点もあることあるのですが、拡大解釈して残業代不払いの口実にされるおそれがあります。これも労使協定で細かく定めることにはなっています。
 後者は、企画、立案、調査、分析といった業務で、労使委員会の5分の4以上の議決が必要です。
 この裁量労働制については、労働側は残業代の支給を逃れるための制度だと批判し、経営側は、対象業務が狭く、導入条件も厳しすぎて使い勝手が悪いと批判してきました。2012年の調査では、専門型裁量労働制を採用している企業は2.2%、企画業務型裁量労働制を採用している企業は0.7%というように、いまのところ、普及しているとはいえません。
 経営側は、こんな制度ではなく、ホワイトカラーの柔軟な働き方に柔軟に対応した労働時間制度としてホワイトカラーエグゼンプション(労働時間等規制の適用除外)制度を導入したがっています。実際このホワイトカラーエグゼンプションは、第1次安倍政権のとき(2007年)に導入の直前までいったのですが、「残業代不払い法案NO!」「過労死促進法NO!」という国民世論の盛り上がりによって断念させたという経過があります。しかし、現在の安倍政権は「リベンジ」とばかりに、ホワイトカラーエグゼンプションの実現に執念を燃やしています。労働側は強く警戒し、闘争態勢を築いているところです。

Q13 労働者派遣法の「改正」も話題になっていますが、これは労基法とは別ものですか?

A 別ものです。労働者派遣法を理解するには、まず職業安定法の原則を理解しておく必要があります。

Q14 職業安定法?

A 1947年に施行され、その後改定を繰り返してきた法律ですが、公共の職業安定所および有料の職業紹介事業について定めています。有料職業紹介の事業者は、求職者からは手数料を徴収してはならない(中間搾取禁止)という原則も定めています。いずれにしても、あくまでも職業の「紹介」であって、「派遣」に相当することは一切書かれていません。

Q15 それでは労働者派遣はどんな仕組みですか?

A 経過や、内容以前に確認しておきたい事があります。労働者派遣法は、雇用主(派遣元)と、使用者(派遣先)が異なる「間接雇用」という、職安法では想定されていなかった形態を許し、、中間搾取を禁止した職安法の原則を逸脱して、いわゆる「人いれ稼業」を産業として認知した、本来あってはならない法律だということです。

2014年1月17日

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